香油/朝雪
 
とろりと金色の滴りは オリーブや椿や葡萄の種から得たもの
蓮から採った精の封を切り ボウルに張った油におとす

傷を いつくしむこと

じくじくと痛む恨みを切りひらけば
妄念の脂が現れ 穢れた血があふれた
肉は口腔のように濡れてあかるく光り
禊ぎの場をはれやかに彩る苺の菓子のようだった

優しさを染みこませたガーゼでぬぐわれ
祝福の糸で引き絞り閉じられたかつての恨み
粘膜に戻ったようにうつくしい傷痕に
わたしは香油をすり込む

かわいがる と いうこと

恨みをつくり出したのは わたしの弱さであったのに
丹念にそれを撫で 濯ぎ あでやかに祓ってくれた あなた達の
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