りりい捕物帖/阪井マチ
また元の建物へ戻って椅子に座り、動かなくなった。
一件落着と思った? だけどほら、茄子のへたが黄色くなってきたのが見えるだろう。あれが完全に変色したとき、今度はこいつはさっき助けた二人を家から連れ去って行くんだ。りりいは与えて奪うんだから。きっとどこかまた苦しい場所へ放り込む。そうしたらりりいはまた助けに来るよ。逃がしては捕まえて、また逃がしては捕まえる。残り半生もうこれでいっぱいだよ。全くもうあれこそ世紀のお転婆茄子、この世が生んだ不思議な野菜、全知全能の特筆名探偵、りりいさんであることだよ。
興奮する噂好きの横で私は外を眺めていた。陽の沈みかけた街は紫色に染まっていた。
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