りりい捕物帖/阪井マチ
 
 その角を曲がったら人の命が縮まるよ、と噂好きに脅されたのを気にしながら、私は暗い汚い細道へ入っていった。建物の壁が全部同じ色に染まっていて気味が悪かった。ぱらぱらと降る雨粒は水滴ではない何かくすんだ破片だった。手帖に描いた地図は目的の場所が黒く塗りつぶされていて、それが私の気持ちを規定しているようで厭になった。

 建物の三階に上がって歩くと表札のない扉が一つあった。その扉以外の壁面や窓をすべて覆うように雑誌の切り抜きと表札がびっしりと貼られていた。特に目を引かれたのは五人組の新人アイドルのインタビュー記事で、将来の希望を訊かれた全員が何も答えずに笑っていた。その記事と重ねて貼り付けられた表
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