舗装路/帆場蔵人
 
汽水域でしかいきられない乱反射は
椅子に座っても安らぎにはほど遠く
手から手と瓶のなか追いかけていた

 わたしの、わたし達の心は縛られることはない
 そんな風に真っ向から歌う事を忘れてしまった

瓶詰めの化石達に等しく月光を与え
欠落したものを忘れない為の仕草が
椅子に腰掛けながら遊歩する、夕べ

足跡を残さない誰かが通りぬけていく
椅子の背らは益々まるく、瓶は満たされ
幼い月たちさへ満ちていくのであった

 カーテンを手繰り寄せながら落ちてゆく
  みぎもひだりもうえもしたもなく
 今、ここでしか生きられないものたちが
  瓶の内と外、背を寄せあうだろう

汽水域から来た乱反射は
椅子に腰掛けひととき
永遠の微睡みを得ていた

 どこにでもいて。どこにもいない。
  地球はほんとうに廻っているんだ、と、
   投げられた瓶が汽水域をぬけてみちていく。
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