ままならぬ/凍湖(とおこ)
 
ぼくはひとりでなんでもできるよ……!
という稚さを
大人になっても捨てきれず
いや、ますますひどくなり

おさない傲慢さと足りなさが
反響し
一個の駒のようにまわっている
ぐらぐらと今にも倒れそうな不安定さで

けれど、ひとりでなんでもという響きは
この肉の外側からもあり
無数の無垢の手にドラムのように叩かれて
骨と皮とが震え、唇は取り乱し、舌の根がもつれ
目をあけることさえままならぬ
なんでもできるようにならねばならないと
そうでなければバラバラにされて破棄されてしまうと
追いたてられて
軋んでる

もし
もし、なにもできなくなったら……!

それはこの痛々しく乱れたリズムの終わり
床に横たわり
開けた窓から拭きこむ
さらさらと風の穏やかさが肌をなでる


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