詩の日めくり 二〇一七年十三月一日─三十一日/田中宏輔
 
もね


二〇一七年十三月十日 「父」


今年の4月に
わたしの父が死んだのだが
父は食道楽だった
食い意地がはっていたと言ってもよい
週に一度の外食は
四条河原町の「つくも」という
ニュー・キョートビルと言ったかな
いまはない店で
高島屋の向かいのビルの9階の和食の店や
京極の「キムラ」のすき焼き屋や
「かに道楽」など
そういった庶民的な店ばかりだったのだが
そこらで食事をしたことが思い出される
金魚に目がとまるわたしである

わたしの父親は一生のあいだ
道楽者だったのであるが
なかでも鯉には目がなかった
わたしは父親のことが大嫌いだったので
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