文通/凍湖(とおこ)
 
拝啓と書く
敬具で〆る

小学生のとき
電話とメールというメディアの違いを考えよ、という課題があった
今はもう、そのどれもがふるい
既読がつき、いいねがあり
三分の空隙にすら意味がうまれてしまう時代

わたしは手紙を書いたことのない世代
狭い教室のなかで折りたたんでまわした小さな紙切れが
わたしにとって手紙だった

先月、はじめて便箋と封筒を買った
友人のSNSを見るのを辞めた
そのかわり文通をする

形式のなかに推敲があり
相手方にだけわたしの言葉が残り
わたし方にだけ相手の言葉が残る

話しすぎることなく知りすぎることなく 
とても遅い
そういうのが真新しい
そう、新しいのだ

千年前よりもなお
十年後よりもきっと

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