開かずの間と蜂蜜と/杏っ子
 
開かずの間とは、既に中身を失った空間のことをいう。
脱出成功した私の前のドアの向こうにもはや過去は存在しない。
あの人は少なからず蜂蜜のように私の心に残っていて、
私は時々それをこそげて舐めている陽気なプーさんなのだ。
好きな人がこの先も見つからないなら永遠に減らない蜂蜜を舐めながら苦しみをごまかしつつ私は生きたい。
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