北へ/田中修子
 
いちまいのやわらかな和紙だったね
わたしたち
淡い夕空に星の 輝くような
やぶられて
ふわふわの 端っこが
互いに 手を差し伸べても
又 一枚になれることは
わたしたち
ないのだね

ここにかきしるす
いつしか とどくように

「あいしてる」

引きちぎられた やさしい ちいさな ふくふくの指が
北の空気の澄んだ町で
いちにちいっかい
さみしい

涙を うけとめている
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