花に嵐/中田満帆
 


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 ハナニアラシ 花にまつわる文法についての挿話 送り火がまわる芒原の果てでホールデンを幻視する鰥夫の男 発熱のやまない室で、氷水が爆発する深夜 仔牛の肝臓を輪切りにする作業のなかで、淋病患者の呻きが聞えた 惑星は消える 失われた12使徒を妄想するセンター街の自転車屋で、桃色のサドルが万引きされるのはおまえの陰謀 隠喩とともに眠る少女を攫って、ベツレヘムの星へとむかい、列車を走らせたのはおれの願い 聖なるかな黒メガネの乞食が預言した、アメリカの没落が膵臓のなかで発芽する 

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 ハナニアラシ 嵐にまつわる蛮族の秘話 漁火がまわる葦原の果てでマーロウを幻視する
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