それは猫だった 1/RAVE
 
その日私は急いでいた。
14時に目的地に付かなくてはいけないのに
家を出たのは13時50分だった。
とはいえ5分弱で到着する場所だったから
車を発進させるまでは
余裕の私が少し顔を出していた。

中央線のない住宅地の道路。
駐車場から左折して道に出ると
道の真ん中に黒い塊がある。
そのすぐ近くに保育園児を連れた夫婦が
その塊に注視している。
塊には耳と足が生えていて
モゾモゾと動いている。

その塊を見て私は
ここで車を停めて家族連れに
どうしたのか尋ねたとしたら
この先の未来が
大きく変わってしまうような
人生の分岐点に立ったんだと
瞬時に悟った。

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