出発/やまうちあつし
長距離バスの
停留所に並んでいると
なんだか足元がこそばゆい
なんだと思って振り返れば
雨雲が後ろに
乗るのか、と聞くと
そうです、と力なく
雲のくせに
きちんと並ぶとは律儀なやつ
というより
バスになど乗らなくても
何処へでも行けるだろうが
そう思うけれど
口には出さない
人にはそれぞれ事情があるから
よわってしまうのは
足元がぬかるんでしまうこと
私の右足や左足は
すっかり湿り気を帯びている
せっかくの出発なのに
勇気は踵に宿ると
噂では聞いてきたのに
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