「約束の日」の彼を胸に/服部 剛
 


一人娘と二人で暮らしている友は
愛する者を守る為
絵筆をポケットに潜ませて
今日も街のどこかで現実の日常を描き続けている

「生まれた時点で、乗りかかった船だよ。」

そう言い残して
友は明大前駅で電車を降りて行った
出逢った頃と変わらない笑顔を
座席に座る僕に残して

一人になった僕は渋谷の街に下りて
背負ったリュックに
薄茶色に古びた一冊の詩集を入れて
降り出したにわか雨から逃れてネットカフェに入る
灰色のズボンの裾を湿(しめ)っぽく濡らしたまま

いちごミルクのジュースを飲みながら
遠い空の下にいる女(ひと)の面影を浮かべ
スタンドの灯りの下
京都にいる一人の友に
今、一通の手紙を書いている


 

  * 尾崎豊「約束の日 Vol.2」(SONY RECORDS)
    「FREEZE MOON」より引用。 






戻る   Point(7)