春は闘争、/鳴神夭花
身の丈に合わない服を着てみて
この引きずっている感じが良いんだよ、と
大人ぶってみせた
わたしたちはもういない
スカートを折って丸めないで
シュシュで留めないで
靴下は真っ白で脹脛の半分くらいで
嗚呼 つまらない量産型
ぐるぐる回る十二時の時計が
今、壊れてみせた
この鞄はきっと鈍器になったね
あなたが笑った今日はもう何処にもないよ
大人になってしまった
少女でもなんでもなくなってしまった
この背中に
翼は生えなかった
合唱曲をわざと歌わなかったのも
屋上に忍び込んだのも
苦い煙草を必死に吸っていたのも
全部ぜんぶそのためだったのに
簡単だったね、
あなたは言って
電車は通り過ぎて
袖の長過ぎるセーターだけが
わたしたちの抜け殻みたいに
風にそよいでいた
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