大岡信の評伝について/……とある蛙
 

 本書では詩人からスタートした大岡信が日本の詩歌の伝統としての連歌、連詩、ひいては歌合の伝統ある和歌をどのように見得ているか興味があったのでやり始めたという経緯がある。
 詩の世界における政治との距離は、大岡の生きた時代は大変難しく、何らかの党派制を持たざるを得ない状況があった。
 しかし、大岡は党派制の無い減速した生き方を選んだ。詩においても主題性を減速し、詩自体を主題とした感受性を中心においた詩を肯定した。そのことは個のみが詩歌の主題となり、矮小化することを示すものでは無い。
個を圧殺する集団の論理は否定するが、個を発展させる、あるいは個を拡張させる集団創作は当然肯定されてしかるべき
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