どこまでもつづくせかい/帆場蔵人
暇つぶしによる暇つぶし 隔てられてようやくきづいた
しらないふりで溶けている彫像
忘れてしまった顔が、多過ぎる
ひとの顔がなくなり始めている
だれが喰ったのだ? いや逆にお前が喰われたのではないか
路傍に吊り下げられた、あれがみえるか
鮟鱇によくにているが、河豚かもしれぬ
顔をなくした亡者たち、腹の皮を割いて
濁流が流れおちてゆく ひたひたひた ひとひとひとひと
誰か流れをのぞきこむ スクリーン越しの歪みが歪む
艶めく鉤針だけが、在る、鈍く重い鉤針だけが、在る
顔よ、顔が、顔に、カオカオさんが走りゆく、顔だ、顔か
あかあかと あかあかやかおよ、あかあかとかおよ、かおよ
顔よ、顔が、顔に、カオカオさんが走りゆく、顔だ、顔か
しらないふり
溶けている彫像
忘れてしまった顔
多過ぎる
ひとの顔がなくなり始めている
顔を探した男が鉤針に突き刺さり吊りさがる
昼さがり、カオカオさんの貌に浮かぶ男の貌
隠された口元に浮かぶ、貌よ、貌よ、貌よ……
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