延命/凪目
眠りはひきちぎられた
まだべとつく膜をまとった渇きは脈打ち、指々を起こす
酔いどれた眼球に絡みつく、裂きたがりの指々
乞い、這い、掻き壊す指々
私は、したたかに心臓をうつ
故郷の焼ける臭気
焦げついた、うちすえてむしられた
心臓
発火する血流
頭蓋の内側でのたくる、なましろいぶよぶよども
連中はくべる、
よくのびて透き通った油を
黴びた友情に
滴り落ちるほど吸わせ、着火する
私の息から栄えた業火の、火の輪をくぐって得意になる、黴のつまった布きれ、きみ
きみはまた焦げ、おどけ
燃えたつ尾を振り、笑う
綱の上で炎上するきみ
私を見据え
私の心臓、穴、その跡
そいつに染み込む油に引火した、きみ
私は、きみに挨拶できる
だから私は、沈黙によって応える
雄弁な歯によって
おしゃべりな指によって
食い散らかした食卓の上で
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