水/中田満帆
水の夢を観た
水を呑む夢でなく、
水にまつわる夢でなく
水、そのものの夢
個体が液体になったのか
自我が消失したものか
ぼくにはわからない
その夢のなかでは
光りと気泡だけで
魚も舟もない
アルコールの陶酔感もないなかで、
ぼくは水の記憶というものに触れたような気がした
夢はそこで終わり、
やがて現実の彼方から窓がひらく
大きな嘴をした水鳥が、
泥濘んだ畔を歩き、
そして飛ぶ
ぼくは墜落しながら、
この作文をしあげようと、
必死になってベッドを泳ぐんだ
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