水/中田満帆
 

 水の夢を観た
 水を呑む夢でなく、
 水にまつわる夢でなく
 水、そのものの夢
 個体が液体になったのか
 自我が消失したものか
 ぼくにはわからない
 その夢のなかでは
 光りと気泡だけで
 魚も舟もない
 アルコールの陶酔感もないなかで、
 ぼくは水の記憶というものに触れたような気がした
 夢はそこで終わり、
 やがて現実の彼方から窓がひらく
 大きな嘴をした水鳥が、
 泥濘んだ畔を歩き、
 そして飛ぶ
 ぼくは墜落しながら、
 この作文をしあげようと、
 必死になってベッドを泳ぐんだ
戻る   Point(5)