灰燼から這い出る/幽霊
 
、思いがけない幸福を知らせる手紙が、埃と昆虫の糞で汚れたままです。彼が自らの手で緑の明るいカーテンを引っ剥がした日があった。代わりに遮光カーテンをぶら下げた。そして机の引き出しの中は流産した小説の墓場。
 彼の友人Y曰く、「あいつは行動力がないんだよな、見ててイライラする。」友人Yは遠い空を睨みながら、東京駅行きのきっぷを撫でてそう言いました。そして友人Yは時間の狂った腕時計を一瞥してせかせかと去りました。
 彼の知人W曰く、「彼は慎重過ぎるなぁ、完璧主義の潔癖症が彼を縛ってる。色々と考えすぎて…でも書き始めたら良い感じになると思うけど…。」知人Wはタロットカードをシャッフルしながら、そう答え
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