志向―在る/ゼッケン
揺らがない区民たちは磁力船で互いの区を行き来するようになる
新たにむき出しになった地表はかつての下水からあふれたワニたちに覆われ
関心の欠如した垂直なやさしさを保持しつつも
強力な免疫をもった帝国が水平に跋扈する
金庫は置き忘れられたまま
復讐は道徳ですらあるとコッカは啼いたにゃぁ
握りつぶされた右手の代わりにおれは
腕相撲の借りをワニ革の財布のようになった下品な左手で返すために
左手にもったダンベルを上げ下げするのが日課になった
' 借りていたので
' 返す、それだけだ
おれの筋肉が膨れ上がるたびに
ワニの皮がぎゅっぎゅっと音を立てている
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