水の声(改)/新染因循
水の声を聴くがいい
水面のゆらめきに影をとられ
なお掴みがたきひとよ
あなたもまた歴史の谷を
流れる水の影なのだ
水は石理を濡らし
戦禍をまたぎ
あなたの口を潤した
だがこの水も
永遠の彼方にうらぶれる
水の声を聴くがいい
声は永遠の泉から湧きあがり
あなたの浜辺と彼方をつなぎ
いつ枯れるとはしらぬとも
この歴史の寂寞に響いている
水の声を聴くがいい
わらべがサンザシを結って遊んでいる
いつしかこの水面に揺れる影が
立ちあがり歴史のさざなみに
手を伸ばすもついに
忘れられるときがくる
ある夕刻わらべが欠伸をした
月下香の薫りがほのかな頃
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