お墓/Hose Enomoto
ある時、墓になった。
直立した墓になった。
絶対的にみられる存在となった。
時折、どこか疲れた人々が墓に殺到する。
みな転ばないように歩いている。
墓前に立ち手を合わせる。
花を飾り、水をかける。
我も大した存在であることを確認する。
ある日、揺れとともに、隣の石が倒れた。
なれの果てか。
いずれ苔に包まれるのだろうか。
または、乾燥して砂と化すのだろうか。
再びみられる時は来るのだろうか。
刻印された家の名とともに。
カラスが鳴いている。
キツネが振り向く。
私の声に気づいたように。
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