灰色の鬼/板谷みきょう
 

さて、その姿を見た村は、大変な騒ぎです。
何せ、丘の上から、ゆっくりと、恐ろしい鬼が、こちらの村に、向かってきているのですから。
ガタガタ震えながら、それでも村の男たちは、それぞれ手に手にクワやスキを持ち、握りしめ女や子どもを家に入れ、村を守るために集まってきました。
それは、鬼にも見えていましたが、鬼は娘に会って、自分の気持ちを伝えたいだけなのです。
恐ろしくて、逃げ出したいのを我慢し、顔をこわばらせながら鬼は、ずんずん歩いて行きました。
その間にも、村人たちと鬼の間が、少しづつ縮まっていきます。
お互いの息遣いも聞こえそうな程の、目と鼻の先になっても、村人たちは誰も動きません
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(1)