屋根の上に寝転んで 〜かみさまへの手紙〜/服部 剛
 
かみさま
大人になった僕は
ずいぶんと長いことあなたのことを忘れていたようです。
時に僕はあなたの姿を見たいと
只(ただ)、無力な両手を組み合わせては空に向け
一心にお祈りしています。
幼い頃にお父さんとお母さんの間に手をつながれながら
休日の散歩をした道の上を見上げ
なんの疑いもなく
太陽の微笑(ほほえ)みと会話していた頃のように。

昨日突然降ったどしゃぶりの雨にずぶ濡れてしまったので
独りの家に帰って服を着替えて
ふとんにもぐって丸まる僕は
夜の淵にふくらむ小さい光の内から
あなたの声を聞きたいと願い
空の子供だった日々の遠い記憶をたぐりよせるよう
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