世が明けてくる/こたきひろし
 
母親のお腹の中では胎児だった私は
待機期間をじっと待って
晴れて産道を通り抜けた日の事は
記憶の黒板に何も書かれてなかった

果たして私の記憶の黒板に
最初の文字が書かれたのはいつなのか

私は私の自我の目覚めについての確かな記憶もないのだ

私の世界の始まりはいつだったのか
それは私の世界の終わりの手がかりに繋がらないのか

そんな事考えても
悩み抜いても
ゴールには辿り着けない

私の記憶の黒板は
悩ましい落書きで埋め尽くされているのだから

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