ありがたや/服部 剛
トイレットペ−パーの残りを
使いきり、ちんと鼻をかむ
残った芯に
印刷された ありがとうございます
の文字に
僕も呟く ありがとう
最近は鼻づまりがひどくて
なかなか寝つけずしんどかったが
昨夜は鼻うがいが功を奏して
すっきり、目が覚めた
ああふつうに
呼吸できるのは
ありがたや
僕は忘れていた
日々無数の あたりまえ に
支えられ、立っていること
ありがたや
妻と息子と今日会う誰かに
食事とトイレと布団に
この詩を書くペンを作った人に
あの日の挫折に
時々うまくいく瞬間に
五文字の 念 をおくります
いつか−−この人生に
ふかく頭(こうべ)を垂れる日まで
続いてゆく道の途中
この両手に受け取る
今日という一日
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