tell me, bedtime story/中田満帆
 

 かの女は夢の隠語
 かの女は愛の代名詞
 そしてくずかかったおれを見棄ててしまう、
 見殺してしまうなにかだよ、「ユカコ」
 バウハウスの故郷の果てで摘み取った林檎が、
 葡萄でなかったという理由だけで射殺される未来にまで
 かの女は侵入しようとするのか、おれにはわからない
 38wの灯りのなかでいまは目ざめようとする犯意なら、
 大聖堂にかけてやれるから、
 まだ大丈夫だ

 現在が到着する
 神とともに谷上線へと登る
 ぼくという一人称がまったく不確かなところで、
 きみがきらう、このぼくが再臨して羽衣をちらす
 もちろんのこと、ローズマリーと一緒くたに
 かの女は夢の代名詞
 かの女は死の夢魔
 そしてくずれかかったわれわれに灯す、
 ささやかで、火花みたいなかたおもいだった
 いずれ道で黄金が舗装されるとき、
 あの老人と革装本を手に謳う、
 愛の標本、
 まだ大丈夫だ

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