夏が来る/
入間しゅか
夏が来る
懐かしい夏が来る
一度として同じ夏はなかったのに
懐かしい夏が来る
そうなんです
夏が好きで泣きたくなる
涙を流すのは
恥ずかしいことだと
思っていた少年時
伸び放題の雑草に挟まれた
川沿いの小径で
飛び回る羽虫の群れに
冬へのいきかたを
訊かれた気がして
泣きたくなった
泣けるわけでなく
その代わりに
手で羽虫を払いのけたら
もうすっかり夕焼けで
懐かしくて
ちょっぴり悲しい景色を
思い出したから
もうすぐ
夏が来る
戻る
編
削
Point
(2)