4.23メモ/道草次郎
 


生きていることを楽しもうと、生きてみる。
すると呼吸がよそ行きの顔をする。夕飯が腸のなかで踊りをおどる。心臓がメトロノームになる。
段々、生きているだけで満たされていく自分が浮き彫りになる。だけど、生きていることを楽しみすぎると、死ぬのがとてもこわくなる。
こういう原初的な感覚を、ふだん、忘れていたことに、あらためて驚いてしまう自分がいる。



木のことがすこしわかる。
ひとりさみしく低い山を登って下りて来た。 木の堂々は、動けない反応だ。我々の運動は、木の静態に輪郭を与える何がしか。
それはあながち嘘ではないだろう。木に飼われているのだ、我々は。
足取りのおぼつ
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