四月/はるな
 
、痛くないのがわからない。わたしの皮膚は擦りむけつづけて分厚くなってしまった。むすめが生まれた時、こんな薄い、柔らかい皮膚に傷だってつけちゃいけないと思った。だから転ばないように抱いて歩いたし、手をぎゅっと繋いだ。そのくせ勇敢であれと願ったのだ。

ともかく起き上がって枯れた鉢を整理していると、自分の手指がどうにも冷たくて、「もっとそとを歩くのよ」と言われたことを思い出し、まちをうろうろする。わたしが家の中にいるあいだに、花はどんどん咲いてしまう。重たいのか軽いのかわからない足を動かすには季節はどうにもまぶしすぎる。感覚というものが肌のうえに剥き出しているような心地で、風が吹くのにも、知らないこどもが笑うのにも、日ざしが、道路に影を作るのにも、いちいち極まってしまうのだった。
戻る   Point(5)