故郷と多摩川/番田 
 
川でシーバスが釣れるというので、何度か出かけては、通っていた。しかし、何も釣れたことはなく、銀色の魚体に憧れる頭の中には通りで食べた茶色のチキン料理の記憶があるのみだった。そして、もうひとつの記憶としては、黒ビールを振る舞う店の幸せそうだったテラス席の風景。ある日僕は、ランニングで、通い慣れていた川伝いの道を走っていると、野球をしている人や、ラグビーをしている人を見かけた。ああいった場所に集まるような人は、どのような関係上のつながりなのだろうと時々考えたりもする。僕が時々釣りをしているときに、学生のような人に話しかけられたりするのに、似ているのかもしれない。見知らぬ女性が時々釣りをしていると後ろに立っていたり座っていたりするような、野球のマネージャーの気持ちと、同じ類の気持ちなのかもしれないのである。


戻る   Point(0)