死を待つ男爵/無限上昇のカノン
 
年老いた男爵は死を待っている
食べることもせず飲むこともない
身に纏うラビットファーだけが艶やかに光り
半開きの眼からは輝きが消えている
牢獄のような部屋の中
彼はその時を待っている

自分がどれほど愛されていたかも知らず
男爵は死を待っている
人々は男爵のために祈る
天の国の扉が男爵のために開くようにと
彼は何も知らず死を怖れることもない

日々、弱っていく男爵を
人々は抱きしめる
耳元で囁く大丈夫だよの声
男爵は何も答えない
年老いて死を待つ男爵は何を想っているのだろう


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