何か欲しいんだ 何かしたいんだ/こたきひろし
 
ある夜
夢の中では
母親の首をしめている自分がいたんだ

思い切り
力の限りしめたんだ
そしたら
母親が必死に抵抗して来て
その顔は苦悶に歪むんだよ

だから
俺は母親の首の骨か折れるくらい
渾身の力を加えたんだ

もう少し
ってところで
今度は背後から
誰かが俺の首をしめてきたんだ
何か喚き散らしながら
俺にはその声に聞き覚えがあったんだ

紛れもない
父親の声だったんだ

そのうちに俺の意識は
飛んでいっちまった

だけどさ
俺は飛んでいく意識を
必死に追っかけて
捕まえたんだよ

夢の中では
何でもありなんだな

そして取り戻した意識の中で
やっと気づいたんだ

母親も父親も
とっくのむかしに死んでたんだって

すると
みるみるうちに暗闇は晴れて
俺は夢を見てたんだって
気づく訳さ

そしたら
俺の覚醒しきれない
ぼんやりとした頭の中に
あらわれたんだ

俺はいったい何でこんな悪い夢を見てたんだって
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