声が、/あみ
 
湿っている。
その生々しさに、ああ、と声が漏れる。


ゆらゆらと揺れる自分を顰め
興味の薄れた容れ物を眇め
値を付け飼う生き物を眺め
未だ取り残された世界に潜め
飢えとは、喉を突き破るほどの飽食だとしても
乾いて、乾いて
だから

瞼をこじ開け眼球を舐め、

爪は硬く、尖り
皮膚は頑なな拒否が痛む
髪は別離を待ち侘び躊躇いなく切り付け
故に、

傷をつけない安堵と欺瞞
また
柔らかく温かい
その湿った殻が舌先に震えて


ああ、そちらにも世界があるのかと
裏側まで捻じ込みそうになり、漏れた
鼻腔を掠り
溜め息にも満たない


声が、

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