ディプロマット/妻咲邦香
ぬ存在でありながら
鞭をふるい私たちのすぐ脇を走り抜ける
向かいの私の帽子が吹き飛ばされた
変声期を迎えた子供がまた何やら売っている
よく見たらそれは「虚栄」、らしかった
買わなくて良かった
誰が何を選ぶのか事前にわかるというのなら
それなりに価値があるというもの
私はその子に聞いてみた「敵はいないの?」
「いるさ、あそこに」
子供が指差した先に、馬を降りたばかりのもう一人が
笑みを浮かべ会釈していた
奇妙な三角関係が続いている
染み付いた羊肉の匂いで
二人のうちどちらかが夫婦である事を知る
子供はまた売り子に戻った
今度は大きな果物を売っている
棘のある果物のようだ
いずれも同じ属性であることから
混ぜて使用する事を勧められた
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