ディプロマット/妻咲邦香
 
奇妙な三角関係が続いている
愛されたい自分と愛したい自分
互いに譲らないし干渉もしない
向かい合ったままで、そして
もう一人が居ない
お茶はお代わりの分まで用意してある
傷付ける言葉ももちろん十分に
もう一人は遅れているのではない
最初から存在していないのだ
だから

奇妙な三角関係が続いている
野生的な自分と飼い慣らされた自分
対立しているわけではないが、容認もしていない
変声期を迎えた子供がやって来て、何やら売っている
鳴り響くファンファーレの後
競争馬は一斉に走り出した
私たちは思わず身を乗り出す
もう一人はあそこに居るではないか?
今もって認められぬ存
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