幻視/タオル
 


ことばは、はっした時点で幻になる。
よくも悪くも。

ね、みみをもつってそういうことだよ。
幻のみみは幻を受けとれる。

昔、にんげんのみみがとても好きな王様がいて、
その王様はロマンティックかつ残忍な性格だったから、
家来やその妻、そしてその子供たちの耳をそぎ落とし、
森の奥ふかくに埋めたのだった。
耳のない死体がお城中にころがって、
とうとう王様の世話をするものが誰もいなくなったから、
王様は乞食のようにみすぼらしくなったとか。

──ウソのようなほんとうの話。

その王様が夜ごと唄うんだよ
ボロ布になったマントをひるがえし、
夜はわたしだ、わたしが
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