ブルームーンの流れる河/中田満帆
 


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 ブルームーンの流れる河は、あなたのポケットのなか 粉末ジュースを呑みすぎた子供時代のような夜がそっと手をふって花になる朝 韻頭を失った詩がどこまでも誘うからか、スカートが皮膚を縫う 渓声がする水の涸れた森で、ふいに手を展ばしたところが宝箱だったせいか、あなたが心臓を引き抜くと、 

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 眠り草の匂いで、眼を醒ます男がいる 崖下から都市を望む天体を頭上にして、五体投身のさなか、眼をひらく女がいる びくともしないワンピース 鉄骨づくりの襞が真夜中に疼き始め、胞状奇胎と診断されたのは、いまから20年もさきのことで、かれらが歩いた道には家が建っている おかしなこ
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