心電図/妻咲邦香
 
景色はそれを必要としてる人の前にだけ現れる
それはいつの日か声の上に、言葉の上に
紙の上に落ちてくる
誰も書かなくなった詩を、誰かがまた書き始める
知っていましたか?
世界はもうすぐ微笑む準備をしています

神様なんて裏切るためにあるんだと
そう信じてた少女が
少年の心臓に手を伸ばした
小さな町で、何処かの片隅で
待ってたんだよこうして
忘れ去られるのを

ずっと追いかけているものがあるだけで
余計な知恵を手に入れて、心電図を書き換えた
無垢の妖精に姿を変えて
花の蜜だけを探し飛び回る私は
自由だけど今にも破れそうな羽根を背負っている

洗濯機を回す
ニュースの声がかき消される
歯医者の予約を確かめる
奇跡は短ければ短いほどいい
そうして、誰も読まなくなった詩を
誰かがまた読み始める

それはもはや言葉じゃなくて、声
ずっと大事にして使わないでいたものだから
待ってるんだよこうして
閉めてしまった蓋の裏側で
忘れ去られるのを
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