透明なブルーと荒野/道草次郎
雪見障子からの陽は記憶している
あばら家の
たじまはるの中庭には
ミドリガメと田螺と湿っぽいツワブキ
があった
近所の原っぱでは
よく
空がひっくり返った
どこもかしこもクローバーの匂いがして
転がると春になった
も一度転がれば
猫にもなれた
ある日
図書室から帰ってきた(本物と信じていた)兄は
他人のようだった
和室の黄ばんだ畳に落ちている栞は
駱駝の瘤か
薊の棘
のようだった
何度目かの青い春
初恋の人の髪は濡れていた
夢精は
突如その晩におと
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