ウミネ/道草次郎
あんまり良い詩を書いちゃ心配よ
と
ウミネのおかあさんは言う
ウミネは
無花果の好きな島の男の子だ
ウミネは
時々
ひとりでぶらぶらと
白い砂浜にやってきて
波の音が
ズザザザァーー
ズザザザァーー
というのを
ぼんやりいつまでも聴くことがある
それが好きなのだ
浜辺にはパラソルがあり
その下には
貝殻と真っ赤なリボンが転がっている
その上を
蟹の親子が歩いてゆく
ウミネは目をつむり
綺麗な物のことを
できるだけたくさん考える
ウミネには
恋人も友達もいない
時々おかあさんの肩を叩きながら
自作のむーむを朗読したりして
過ごすのが日課だ
ウミネのおとうさんは
もう
帰って来ない
ウミネはいつか
島の裏へ
綺麗な珊瑚をとりにいこうと
そう
思っている
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