インテグラルが死ぬ前に/月夜乃海花
 

オルゴールは奏で続ける
例え誰が聞いて居なくとも

ドビュッシーの月の光が好きだった
このオルゴールが好きだった
何年も経つうちに積み重なって
忘れていたよ善も悪も

私がこれまで生きてきた中で
どれだけの命が犠牲になったのだろう
そう考えながらカレーを飲み込む
生き物の産声、悲鳴が聴こえる
死にたくない、死にたくない

世界は積み重ねで出来ている
包丁に反射する私の肌はまだ赤くない
世界は積み重ねで出来ている
産声も泣き声ももう覚えていない
世界は積み重ねで出来ていた
それでも世界は同じ過ちを繰り返す

自分を積分できますか?
わかりません
積分の方法は習ったのに
自分を表す関数がまだ不明なのです

自分を微分できますか?
わかりません
微分すればするほど
同じ関数が生じて壊れてしまいます

インテグラルは今日も叫ぶ
ネジを回さずとも
生きていると叫ぶ
今まで積み重ねた意味を
未来を無き想像する夢を

__Aの手記より
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