廃線/入間しゅか
現実とはと彼が切り出したので、言葉の続きを待った。
現実とは道だ。それも廃線だ。草が茂り、傍らにゴミが散乱し、どこからかガソリンの匂いがする。吐瀉物や廃棄物のシミが至る所に散らばっている。線路は錆び付き、無人駅でこない列車を待つ人と出会う。彼もまた廃線を歩いてここまでたどり着いたと言うだろう。その時君は知ることになるね。歩いてきた道はまっすぐ伸びていた、しかし、枝分かれしたいくつものまっすぐの一本だったと。
さて、と言って彼は立ち上がると、僕を残して部屋から出ていった。僕は部屋を見渡して、壁に飾られた小学生の時に描いた虹の絵を眺めたり、本棚の小説のタイトルを端から順に読んだりしていた。読ん
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