たまゆら/帆場蔵人
耳から咲いたうつくしい花の声たち
眠っているときだけ、咲く花がある
あなたはそれを観る事はないだろう
生きた証し、誰かの
言葉に耳を傾けた証し
母さんの声は咲いているか
愛しいあの娘の声は
知らない人の知らない花も咲いている
家族の親しい声も、忘れさられた声も
等しく咲いて花弁は散り朝の陽に濡れる前に
枯れていく、花弁を一枚口に含めば
あなたの事がもっとわかるだろうか
耳を傾けてあなたの声が咲くのをみたい
けど誰も自分の耳に咲く花を観る事はない
仰向けで手を組むあなたの耳を見つめて
いる、過去と現在を行きつ戻りつ、揺れる声たち
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