くりかえしの水/為平 澪
 
い合って 椅子に並んでいた姿

使い慣れた菜箸で挟みたかったもの、
古びた布巾で包んでしまえなかったもの、
隅においやられた三角ポストが呑み込んだ
役立たず、という言葉と出来事が
おたまの底にぶら下がって すくえなかったあの頃

生きることは火で水を沸かすこと、
水で喉を潤していくこと、
くりかえされる水について
不確かなものが取り残され確実なものは流されていく

うつらうつらと霞んでいく風景の向こう、
悴んでいた古くさい夜が反省と再生を繰返し
深呼吸をして泪粒ほどの朝日を吐き出す

いつしか毎日は 湯気のように立ち上がり
人は再び、光のほうへと目を向けていく


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