弦をさわれない/ロシア青猫
 
雨。
月曜日はいつも雨。嘘、
でも雨が多い、
僕の黒いバイオリンケースが濡れるから。
黒くて安いケースに入ってるバイオリンも安っちい
先生のバイオリンはとてもいい音がした。

雨の日にいっそう暗い僕の心は
壊れそうな小さな傘の空間にすっぽりうずくまる。
殻も膜もない身体のそとを細かい、線をなす水が
流星雨のように墜落していく。

机にある一番おおきな、
写真パネル用に買った色気のないカッターで
痩せた手の首をつついたら
僕のこんなひょろい力でも貫けるだろうか。

渦とも流線ともいえない、
この脳内の電気信号の流れに翻弄され
胃は吐き気を覚える。
もともと誰もいない世界です。

ひとりきりの傘の殻なかで
きょうは眠っていよう。
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