救い/中田満帆
不運なほどになにものにもなれないで
御幸通を歩き、やがて小野浜公園にやって来る、
老人たちにまじって、
おれも炊きだしに並ぶ
それだけの救い
人身事故みたいな事実の積み重なりのなかで、
花が咲く、
剪りとられ、
枯れる
ジム・モリソンがステレオのなかで「放牧地帯」を吼える
ただ生きてるってことが恐ろしいまでに迫って、
支払とか、
呑み喰いとか、
マスを掻くだとか、
かつてあったはずのものに引き寄せられてしまうときとか、
とにかく、そんなものに恥ずかしいくらい恐怖する
夢のなかで声がした、
おれは訪ねた、
だれだって、
声は若い男だった
「おれだよ」
それだけいいかえして夢も醒めた
過古にすがろうとする、いまいましい自身
そして未来にむかって考えることができずに
酒に溺れ、金を喪った8月の初め
すべてのものを放逐するためにたったいま、
声の主を探してる。
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