さよならが来ないうちに/こたきひろし
ガソリンスタンドの先の路地を入ると
そこは一方通行路
いつもクルマで走る
路地の両側には所狭しと民家が軒先並べてるけど
途中右側に小さな産院の駐車場と建物がある
そこは助手席に座っている嫁さんが二人の娘を産んだ産婦人科だ
もちろん二人とも俺の子供に間違いないと
ひたすら信じてる
だって彼女は俺の初めての女
彼女にとって俺が初めての男だったかについては
多いに疑問符付くけど
産院の前を過ぎると間もなく左側に洒落た建物の歯科医院がある
そこは以前夫婦が一緒通った歯医者だった
何の感慨もなく通り過ぎると右側に質店がある
その店には過去に一度だけ入った
結婚指輪を質に入れて流してしまった店だ
感慨深く通り過ぎるとその先で
普通の道にぶつかる
辺りは決まって夕暮れの時刻
普通の道は坂道になっている
クルマは右側へとのぼる予定だが
いつも左右安全確認する為に停止していると
必ずと言っていいくらい不安な気持ちに襲われるのだ
その先でクルマ事
二人分の人生が終わったりしないかと
二人分の人生が終わったりしないかと
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