点火/すいせい
 


ただその時が過ぎていくのを待っていた、嵐のような夜の、焦りに似た感情はひたいに汗を記述し、確かな、また不穏な外気はそれを凍らせる、服の中にこもる粘着く湿度の中で何度も何度も描写は続く。水音一つしなかった、いわば死体置き場の片隅で、汚れた掌の中で、白い小さな華が咲くのを待っている。口元から立ち上る蒸気が汚染された空気を振動させる、花弁には雫が取り巻いて、流せない涙の代わりにすすいでくれるだろう。けれど私は待てずに掌をこすりあわせてしまう。咲くことなくちぎれてしまうその茎を見つめる瞳の色は冬。消えてゆく一瞬の温もりを求めて、また失っていく。
孵ったばかりの雛の弱々しく柔らかな様子、可愛らしい
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